最高裁判所第二小法廷 昭和58年(オ)699号 判決 1986年12月19日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人宗政美三の上告理由第一点一について
原判決は、(一) 平田イサ子は上告人有限会社平田海運の代表取締役平田頼司から会社運営のための資金の借入れ及びそのための手形振出に必要な権限を授与されていた、(二) 同女は、右権限に基づいて本件各手形の振出行為を行つたものであるところ、右振出に際し、現代表取締役平田頼司を表示する名称として前代表取締役平田元次郎の名称を用いたものである、との事実を認定している趣旨に解される。原審の右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯することができ、右事実関係のもとにおいて、同上告人は本件約束手形の振出人としてその手形金支払の義務を負うとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
同二及び三について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に基づく証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決を正解しないでその違法をいうものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 香川保一 裁判官 牧 圭次 裁判官 島谷六郎 裁判官 藤島 昭 裁判官 林 藤之輔)